SPURのインスタグラム(spurmagazine) - 9月12日 16時47分

一切の前知識無しにやっと観た「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。ティナ・ターナーは出てくるのかなとかぼんやり考えながらチケットを買いました。

先入観なくスクリーンでキャストを知れたのもよかったと思います。グッチの香水「フローラ」のムービーでも雰囲気たっぷりだったアビー・リーや、ゾーイ・ クラヴィッツの奮闘に加えて、「チーム妻」のリーダー、ザ・スプレンディド・アンハラッドを演じるロージー・ハンティントン＝ホワイトリーが、 ジョーに向かってウォー・リグのドアを開け放ったときの表情の勇ましかったこと。

ロージーとは一度だけ仕事をしたことがあります。2008年の夏、場所はNY郊外のハウススタジオでした。当時の彼女はファッション業界のなかでもセクシー担当という立ち位置で、トップブランドのランウェイを総なめにするというよりはランジェリーのジャンルで頭角を現し始めた存在。起用したわけはバーバリーのキャンペーンモデルに内定した直後だったこともあるけれど、ボリュームある上唇と個性的な鼻のかたちも魅力的で、着用予定だったドルチェ＆ガッバーナのトムボーイなデニムのルックと彼女の官能的なムードの対比が見てみたい、というのが最大の理由でした。そして、シャツのインナーに描かれたデヴィッド・ボウイと同じイギリス人であることも。

ちょうど休暇のためイギリスに帰る直前、３時間だけだったらという約束で撮影場所にやってきた素顔の彼女はとても気さくで、開口一番「学校で日本語を勉強していたから日本の雑誌に出られて嬉しい」。聞けば通っていた学校ではスペイン語やフランス語に加えて日本語クラスを設けていたということで、簡単な自己紹介を日本語で披露してくれました。肉感的な唇からゆっくり発せられるコンニチワやサヨナラは実に優美で、こんな生徒の日本語の先生に嫉妬するくらいそのさまは可愛い。出身を聞くと「デヴォンのプリマスの近く。農場で動物たちと一緒に育ったの」とにっこりするのですが偶然、撮影クルーのカメラアシスタントにデヴォン出身の男の子がいて「彼女の実家、話しててだいたいあのへんってわかったんだけどすごい田舎」と一言。それはどのくらいと聞くと「今までの人生で会った人のなかで、いちばん田舎」、彼はそう言うのです。大自然豊かな農場で、こんなに美しい娘さんが乗馬する姿にしばしうっとりしたのですが（脳内では「大草原の小さな家」を妄想）、彼女は私はごく普通の女の子だったと謙虚にも連呼するのでした。

勇ましく成長するスプレンディドを目撃しながら、農場で育ったという彼女の話に合点がゆくような気がしてきました。そしてマックスが思わずサムズアップしたときのロージーの誇らしげで無垢な表情にはっとしたとき、実は少々サイズがキツかったデニムに一言も不平も口にせず、撮影に臨んだあと空港に向かう車の窓からありがとう、と見せてくれた屈託の無い笑顔が重なってしみじみとした気持ちにも。アンハラッドは「愛される者」という意味の、ウェールズを起源とする名前だそうですが、愛されるに値する美しさとそれ以上の強い何かを見せる女優としての活躍が楽しみです（編集G）
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