昨夜ツイッターにて連投したレビューをこちらにも再構成してあげます。 舞台は広島、呉。戦前、戦中、戦後の日本を跨ぐお話。可愛くてちょっとふわふわした「すずさん」という女の子が主人公。 原作こうの史代、監督 片渕須直。主人公を演じるのはドラマ「あまちゃん」主演の「のん」。 まず映画を観始めて感じるのは、舞台となった世界に丸ごと入り込んだかのような臨場感。 まるで自分がこの物語の登場人物になったかのよう。圧倒的な当時へのリサーチと描き込みがそれを可能にしている。 しっかりアニメの(というか原作のこうの史代さんの)絵柄なのだが、背景、キャラクターとも実在感がある。動きの繊細さが、凄い。 シーンに よっては艶かしささえ感じる。そして愛おしさも。 既に方々で賞賛されているが、すずさんを演じた「のん」が素晴らしい。俄かあまちゃんファンの僕だから言ってるわけではないよ。最初の5分は彼女の声だと思ってた筈なのに、いつのまにか、すずさん、という人間にメタモルフォーゼした!と思うほどのシンクロ感。 生粋のコメディエンヌである彼女だが、実は怒り、悲しみの表現が素晴らしいと常々思っていた。人の心を震わせる、という意味では、今回がベストパフォーマンスなのではないだろうか? 脇を固める声優、俳優陣も素晴らしい。変に抑揚が上下せず、実際の会話感がある。映像含め、きっちり演技している。監督の片渕須直氏の演出が的確なのだろう。コトリンゴさんの音楽、歌も美しく、まるでもうひとりの登場人物であるかのような存在感。 避けては通れない戦争の描写はリアルに恐ろしいが、唐突とも言えるスピードで次の場面に切り替わる。悲劇、恐怖をあえて引っ張らないテンポ感。もの足り無ささえ感じるそれが、気がつけば僕らの心に深く楔を打っている。 この映画は喜劇であり、悲劇でもある。笑いがあり涙がある。離別があり出会いがある。絆を確かめるバディムービーであり、切なく愛おしいラブストーリーである。全ての要素が重層的に、でも押し付けがましく無く、物語の中に存在している。 エンドロールの最後の最後まで物語は続く。僕らは涙を流す。悲しいだけではない。嬉しいというのも違う。色々な感情がない交ぜになった温かい涙。この世界の片隅に我々もまた生きている、という自負と感動。そしてこの作品の作り手達への賞美も。 この映画は、それぞれのプロフェッショナルが結集して、少しの甘えや緩みもなく、労をいとわず、過剰な見返りも求めず、各々が胸を張って作り上げた宝物なのだと思う。 だからこそこの映画が報われて欲しいと思う。是非この作品を映画館で目撃し、体験してもらいたいと切に願う。プロの端くれとして、世界の片隅で歌を歌うひとりの人間として。 #この世界の片隅に#片渕須直#こうの史代#のん#instamovie

kaorukurosawa_lovelifeさん(@kaorukurosawa_lovelife)が投稿した動画 -

黒沢薫のインスタグラム(kaorukurosawa_lovelife) - 11月13日 11時54分


昨夜ツイッターにて連投したレビューをこちらにも再構成してあげます。

舞台は広島、呉。戦前、戦中、戦後の日本を跨ぐお話。可愛くてちょっとふわふわした「すずさん」という女の子が主人公。
原作こうの史代、監督 片渕須直。主人公を演じるのはドラマ「あまちゃん」主演の「のん」。
まず映画を観始めて感じるのは、舞台となった世界に丸ごと入り込んだかのような臨場感。
まるで自分がこの物語の登場人物になったかのよう。圧倒的な当時へのリサーチと描き込みがそれを可能にしている。
しっかりアニメの(というか原作のこうの史代さんの)絵柄なのだが、背景、キャラクターとも実在感がある。動きの繊細さが、凄い。
シーンに よっては艶かしささえ感じる。そして愛おしさも。
既に方々で賞賛されているが、すずさんを演じた「のん」が素晴らしい。俄かあまちゃんファンの僕だから言ってるわけではないよ。最初の5分は彼女の声だと思ってた筈なのに、いつのまにか、すずさん、という人間にメタモルフォーゼした!と思うほどのシンクロ感。
生粋のコメディエンヌである彼女だが、実は怒り、悲しみの表現が素晴らしいと常々思っていた。人の心を震わせる、という意味では、今回がベストパフォーマンスなのではないだろうか?
脇を固める声優、俳優陣も素晴らしい。変に抑揚が上下せず、実際の会話感がある。映像含め、きっちり演技している。監督の片渕須直氏の演出が的確なのだろう。コトリンゴさんの音楽、歌も美しく、まるでもうひとりの登場人物であるかのような存在感。
避けては通れない戦争の描写はリアルに恐ろしいが、唐突とも言えるスピードで次の場面に切り替わる。悲劇、恐怖をあえて引っ張らないテンポ感。もの足り無ささえ感じるそれが、気がつけば僕らの心に深く楔を打っている。

この映画は喜劇であり、悲劇でもある。笑いがあり涙がある。離別があり出会いがある。絆を確かめるバディムービーであり、切なく愛おしいラブストーリーである。全ての要素が重層的に、でも押し付けがましく無く、物語の中に存在している。

エンドロールの最後の最後まで物語は続く。僕らは涙を流す。悲しいだけではない。嬉しいというのも違う。色々な感情がない交ぜになった温かい涙。この世界の片隅に我々もまた生きている、という自負と感動。そしてこの作品の作り手達への賞美も。
この映画は、それぞれのプロフェッショナルが結集して、少しの甘えや緩みもなく、労をいとわず、過剰な見返りも求めず、各々が胸を張って作り上げた宝物なのだと思う。

だからこそこの映画が報われて欲しいと思う。是非この作品を映画館で目撃し、体験してもらいたいと切に願う。プロの端くれとして、世界の片隅で歌を歌うひとりの人間として。
#この世界の片隅に#片渕須直#こうの史代#のん#instamovie


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2016/11/13

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