石井輝明のインスタグラム(comandanteishii) - 11月21日 22時18分

髪を切った。

美容室に着くと、受付の方に「お荷物お預かりします」と言われたので、鞄と上着を渡した。
帽子も渡そうとしたら、「帽子はロッカーに入れてください」と言われた。
僕は帽子だけをロッカーに入れて鍵をかけた。
その鍵を持った時、少し恥ずかしかった。
「ロッカーに入れるほどのことか？」と思ったから。
鞄や上着と一緒に預かってほしかった。
僕が髪を切ってる間、帽子はロッカーに入っていた。
帽子が。
ロッカーに。
鍵のかかったロッカーに。

切り終えて受付に向かう道中、担当の美容師さんが「ロッカーの鍵ありますか？」と聞いてきた。
鍵を渡したくなかった。
なぜなら、受付の方に言われたとはいえ、美容師さんに、僕が帽子だけを鍵のかかったロッカーの中に入れていることがバレるのが恥ずかしかったから。
でも、僕は鍵を渡すしかなかった。
僕は覚悟を決めて、美容師さんに鍵を渡した。
美容師さんがロッカーを開け、帽子を取り出して、僕に渡してくれた。
美容師さんはもう一度ロッカーの中を見た。
「まさか帽子だけロッカーに入れてるわけない」と言わんばかりに。
でも、そこには何もなかった。
美容師さんは振り返って僕を見た。
そして、もう一度ロッカーの中を確認した。
やはりそこには何もない。
美容師さんは、ロッカーを閉めて振り返り、僕を見て優しく微笑んだ。
美容師さんは何も言わなかった。
僕も何も言わなかった。
お会計を終えて店の外に出ると、僕は帽子を深く被って仕事に向かった。

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