北欧、暮らしの道具店のインスタグラム(hokuoh_kurashi) - 2月24日 15時00分
文筆家 大平一枝さんがお届けする金曜エッセイ『あ、それ忘れてました(汗)』(*こちらのエッセイは、毎週金曜日にお届けしています)・第十話のお題は...- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -苦手な「ランキング1位」- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 思春期あたりから、ランキング1位になるものが苦手だった。きっとそれは誰にもよくあることで、私は人とは違うのだという自己顕示欲や、若さ特有の自意識の表れによるものだと思う。 それでもふつうは、二十歳も過ぎれば、1位だから嫌だという感情は薄まってくる。 ところが私は、けっこう最近まで、本や映画、音楽など、とにかくベストセラーをすんなり買ったり見たりするのに抵抗があった。ブランドもそうだ。みんなが買っているものを、色眼鏡で見ていた。 自分は天邪鬼だからしょうがないと、いつからか開き直っていた。そのくせ、天邪鬼を貫き通すわけでもなくだいぶ遅れてから鑑賞する。ベストセラーは半年後くらいに。映画はロードショーが終わってからDVDや2本同時上映のニ番館などで。だったら、みんなと最初から素直に見ればいいのに。結局、内心では人がいいというものが気になっているのだ。 じつは、今回忘れていたのは、つい最近まで自分が“人の決めた1位”が苦手だったということである。 良く行くカフェで毎日流れているイギリスの歌手の曲に惹かれ、CDを買ったらこの冬、どっぷりハマった。毎日聴いても飽きない。また、ベストセラー作家の取材で、資料のために過去の本を読んだら、ものすごく魅力的で圧倒的な筆力の高さだった。そんな調子で、1位になるものを抵抗なく楽しんでいる自分を通して、抵抗があった過去を思い出した次第なのである。 沢山の人がいいと思ったものは、やっぱりそれなりの理由があるものだなあと、あたりまえのことを再確認している。 なぜあの頃、1位が嫌いだったのか。 多勢に同調するのは格好悪いことと、いたずらに信じ切っていたからだろう。 人の評価でなく、本質的にものの善し悪しを判断できるようになるには、年月がかかる。そして、それは人それぞれ必要な時間が違う。 表現することをなりわいにしていると、いいものをいいと素直に認めるのがわりに難しかったりする。 しかし、自分はみんなと変わらないと認めたところから、本当の勝負は始まるのではないかと今は思う。そこからどんなものを生み出せるか。何を立脚点にするか。わたしの個性をどう生かすか。 こういう心境になった自分に、本当はちょっと驚いている。”丸くなった”というのでもないし、なにかをあきらめたのでもない。いいものを素直に認められる自分に、なんだかわくわくしている、という表現がいちばん近い。・(文筆家・大平一枝)・▶こちらの連載は、当店サイトにて「金曜エッセイ」と読みもの検索するとご覧いただけます。プロフィールのリンクよりどうぞ→@北欧、暮らしの道具店・#北欧暮らしの道具店#大平一枝
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2018/2/24