今朝方、実家の犬が死んだ 人間の年にすればもう100歳くらいで大往生と呼べる年だった 最期、とてもとても苦しそうだった 滅多に僕に電話などかけてこない父からの電話があった。最後に向こうからかけてきたのは東日本大震災くらいじゃなかったかいね、などと思いつつ電話をとった。 電話の向こうで父は「しおんが死にそう」とやけに可愛らしい声で言った。 「しおん」は僕が中学3年生の頃に家に来た犬だ。ゴールデンレトリバーの様なふわふわした金色の毛と、日本犬の様な少し哀愁を帯びた顔を持ち合わせた中型犬で、今年19歳になる予定だった。 僕は仕事を終え、人との約束を一つキャンセルして八王子にある実家へと向かった。 家に着いたのは21:30頃で先に帰った妹たちと父は食事の準備をしていた。しおんは母の膝にうずくまって、ヒーヒーと風の様な声をたてている。すでに立ち上がることはできず、横になったままだ。 母はひどく疲れて見えた。聞くと、毎晩の様にしおんが鳴くのでほとんど眠れていないという。 ここまで老衰が進んでいるとは知らず、僕は少しバツが悪くなった。 カレーとステーキという、なんだか浮かれた食事を終えて寝不足だった母は早々に寝床へと向かった。片方の妹もそのまま寝に行き、僕はしおんの頭を膝に乗せて、ぼーっとしていた。 父が「ビールあるぞ」と言うので、妹にとって来てもらった。普段は金麦なのにアサヒの偉そうなビールだった。ビールを飲みながらしおんを見ていると、最初のうちは苦しそうな時間と少し落ち着いた時間を繰り返していたが、夜の3時を回る頃には時々静かになるものの常に激しく呼吸をし、大きく唸る様になっていた。父も寝床に入って、僕は1人になった。 夜中の4時を過ぎた。 機械音にも人の声にも聞こえるような音を、時に不規則に体全体で鳴らしながら、しおんは死のうとしていた。その音は電灯の灯った、それでも暗い部屋の中を埋め尽くし、両親の眠る部屋まで届いていたと思う。僕は、疲弊した両親のためになんとかこの音を止められないかと思った。そう思った瞬間、それはしおんの死を願う事だと気づいた。しおんに対する後ろめたさを感じながら、僕はそれを否定できなかった。さらに言えばこれから回復する理由のない生き物が、ただ苦しみ続けている様を目の当たりにするのはとても辛かった。母が起きて来る5:30頃まで1人でしおんを見ながら僕はそれでも、死にゆくこの家の犬を撫で続けた。 母が起きだしてからしおんの呼吸が止まるまではさほど長くかからなかった。母が診だしてからのしおんはあからさまに大人しく、静かだった。 しおんが体全体を震わせ始めて、母方は「これはもうダメかもね、お父さん呼んできたがいいかな」と言った。 寝ていた父と妹たちにそのことを伝えたのだが、父は「そうかぁ、そうかぁ」と呟いてトイレに入った。 シオンはその後すぐに息を引き取った。 父はトイレから洗面所へ行き、しばらくしおんを見なかった。 しおんは死んだのに、しおんの毛ばっかりその辺をふわふわふわふわと舞っていて、なんだかもうよくわからない気持ちになった。 父と妹たちは泣いていたけれど、僕と母は泣いていなかった。 陽はすっかり登っていて、暑くなりそうだなと思った。

yui3651さん(@yui3651)が投稿した動画 -

小林唯のインスタグラム(yui3651) - 7月14日 12時02分


今朝方、実家の犬が死んだ
人間の年にすればもう100歳くらいで大往生と呼べる年だった
最期、とてもとても苦しそうだった

滅多に僕に電話などかけてこない父からの電話があった。最後に向こうからかけてきたのは東日本大震災くらいじゃなかったかいね、などと思いつつ電話をとった。
電話の向こうで父は「しおんが死にそう」とやけに可愛らしい声で言った。
「しおん」は僕が中学3年生の頃に家に来た犬だ。ゴールデンレトリバーの様なふわふわした金色の毛と、日本犬の様な少し哀愁を帯びた顔を持ち合わせた中型犬で、今年19歳になる予定だった。
僕は仕事を終え、人との約束を一つキャンセルして八王子にある実家へと向かった。
家に着いたのは21:30頃で先に帰った妹たちと父は食事の準備をしていた。しおんは母の膝にうずくまって、ヒーヒーと風の様な声をたてている。すでに立ち上がることはできず、横になったままだ。
母はひどく疲れて見えた。聞くと、毎晩の様にしおんが鳴くのでほとんど眠れていないという。
ここまで老衰が進んでいるとは知らず、僕は少しバツが悪くなった。
カレーとステーキという、なんだか浮かれた食事を終えて寝不足だった母は早々に寝床へと向かった。片方の妹もそのまま寝に行き、僕はしおんの頭を膝に乗せて、ぼーっとしていた。
父が「ビールあるぞ」と言うので、妹にとって来てもらった。普段は金麦なのにアサヒの偉そうなビールだった。ビールを飲みながらしおんを見ていると、最初のうちは苦しそうな時間と少し落ち着いた時間を繰り返していたが、夜の3時を回る頃には時々静かになるものの常に激しく呼吸をし、大きく唸る様になっていた。父も寝床に入って、僕は1人になった。
夜中の4時を過ぎた。
機械音にも人の声にも聞こえるような音を、時に不規則に体全体で鳴らしながら、しおんは死のうとしていた。その音は電灯の灯った、それでも暗い部屋の中を埋め尽くし、両親の眠る部屋まで届いていたと思う。僕は、疲弊した両親のためになんとかこの音を止められないかと思った。そう思った瞬間、それはしおんの死を願う事だと気づいた。しおんに対する後ろめたさを感じながら、僕はそれを否定できなかった。さらに言えばこれから回復する理由のない生き物が、ただ苦しみ続けている様を目の当たりにするのはとても辛かった。母が起きて来る5:30頃まで1人でしおんを見ながら僕はそれでも、死にゆくこの家の犬を撫で続けた。

母が起きだしてからしおんの呼吸が止まるまではさほど長くかからなかった。母が診だしてからのしおんはあからさまに大人しく、静かだった。
しおんが体全体を震わせ始めて、母方は「これはもうダメかもね、お父さん呼んできたがいいかな」と言った。
寝ていた父と妹たちにそのことを伝えたのだが、父は「そうかぁ、そうかぁ」と呟いてトイレに入った。
シオンはその後すぐに息を引き取った。
父はトイレから洗面所へ行き、しばらくしおんを見なかった。
しおんは死んだのに、しおんの毛ばっかりその辺をふわふわふわふわと舞っていて、なんだかもうよくわからない気持ちになった。
父と妹たちは泣いていたけれど、僕と母は泣いていなかった。
陽はすっかり登っていて、暑くなりそうだなと思った。


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2018/7/14

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