母に尋ねた。 『もしも私がこの家をずっと持っていたら、一緒に暮らしてみたい?』 母はきっぱりとこう言った。 『ここは快適だけど、おまえのうちであって私の家ではないの。私の望みは、誰の面倒にもならずにひとりできちんと暮らすこと。』 そうか…と私は思った。もちろんまだ病気が完治していない母の身体の急変や、田舎でひとり寂しい暮らしのことを考えると、強引にでも東京へ引っ張ってきた方がいいのではないか?と、ここ一年ずっと考えあぐねていたのだけど、このヒトは死ぬまで一人の意思を持った個だから、彼女がそう言うなら見守るのも親孝行なんじゃないかと私は思った。 どうしてだか人は、母だの、部長だの、長男だの、先生なんていう肩書きを羽織った途端、本人の気持ちはさておいて、他者から一個体の生き物だ、という基本の見方を失なわせがちになる。 老いては子に従え、というのは嘘じゃない。だけど、その老いの具合や意識も人それぞれに決まっている。カタにはめて体裁だけを作っても、長い目で見れば誰も幸せになんかならない。 まだ2日だというのに、明日の昼、実家へ帰るという母。わかるよ。楽しくても、快適でも、ここにいる時間は小旅行でしかなくて、自分の匂いがするベッドで眠りたい彼女の気持ちが。 私より早く目覚める母のために、たっぷりとコーヒーを淹れておこう。 #東京下町時間

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猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 1月2日 01時35分


母に尋ねた。 『もしも私がこの家をずっと持っていたら、一緒に暮らしてみたい?』 母はきっぱりとこう言った。 『ここは快適だけど、おまえのうちであって私の家ではないの。私の望みは、誰の面倒にもならずにひとりできちんと暮らすこと。』 そうか…と私は思った。もちろんまだ病気が完治していない母の身体の急変や、田舎でひとり寂しい暮らしのことを考えると、強引にでも東京へ引っ張ってきた方がいいのではないか?と、ここ一年ずっと考えあぐねていたのだけど、このヒトは死ぬまで一人の意思を持った個だから、彼女がそう言うなら見守るのも親孝行なんじゃないかと私は思った。

どうしてだか人は、母だの、部長だの、長男だの、先生なんていう肩書きを羽織った途端、本人の気持ちはさておいて、他者から一個体の生き物だ、という基本の見方を失なわせがちになる。

老いては子に従え、というのは嘘じゃない。だけど、その老いの具合や意識も人それぞれに決まっている。カタにはめて体裁だけを作っても、長い目で見れば誰も幸せになんかならない。

まだ2日だというのに、明日の昼、実家へ帰るという母。わかるよ。楽しくても、快適でも、ここにいる時間は小旅行でしかなくて、自分の匂いがするベッドで眠りたい彼女の気持ちが。

私より早く目覚める母のために、たっぷりとコーヒーを淹れておこう。

#東京下町時間


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2019/1/2

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