奥浜レイラのインスタグラム(laylaokuhama) - 10月11日 13時57分

原作のキム・ジヨンには顔がない。
表紙も、文中にも彼女がどんな顔なのかという描写はほとんど出てこない。

女性として生まれ、妻になり、母になると、「〇〇さんの奥さん」「〇〇ちゃんのお母さん」と呼ばれることが増えるように、社会のなかで自分のプロフィールが透明になっていく喪失感。それが表紙のコンセプトだそう。

原作は、キム・ジヨンがかかる精神科の男性医師が記す報告書として客観的な語り口で書かれている。
だからこそ悲観的なラストが際立っていて「やだ、これって困ったことに超リアル」と打ちのめされたのだけど、さて映画はどうか？

2016年の出版後、韓国では「キム・ジヨン法案」が発議された。書籍が社会を進めたと言えると思う。韓国社会の動きが、原作→映画の変化に繋がったところもあっただろうな。

ラストも含め映画になったときの変化は、人それぞれ感じることや論点はあると思う。
個人的には、映画だからこそのリーチ力や、この問題の入り口に立つきっかけにするための大衆性(そうしないと届かないことにまず絶望すると言う人も見かけた。それも理解できる)をもって、届けられるところまで満遍なく届けようという姿勢に大賛成。

パンフに寄稿された山内マリコさんは「わたしたちが映画の出来にネガティブな反応を示すこと自体が、キム・ジヨンの進行を挫くことになる」など、今作への反応にも丁寧に触れていて双方への誠実さを感じた。今わたしにできるのはキム・ジヨンの邪魔をしないことだ。翻訳者の斎藤真理子さんや門間さんの寄稿文もすばらしかった。パンフ、必読よ！

わたしは本作での世代の違う女性たちの連帯の描かれ方にグッときた。そんなシーンになると、毎回肩を震わせて泣いてしまう。(特にバスのシーンはもう…大袈裟でなく嗚咽)

まずはこの映画が、日本中、世界中のキム・ジヨンたちに届くことを願っている。身に覚えがあったりきつい内容かもしれないけれど、連帯も感じてほしい。

男女が互いにハッピーになるための重要なメッセージを、男性にも受け取ってほしいなぁ。(今回ばかりは主語がでかくてすみません)
2020年の重要作のひとつ。まずは対話の入り口に立つこと。映画館でぜひ！
@kimjiyoungjp

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