北欧、暮らしの道具店のインスタグラム(hokuoh_kurashi) - 12月6日 07時00分
【スタッフコラム】3番目に並んだら
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ある火曜日のお昼休みのこと、
翌日の朝食用のパンを切らしていることに気づき、
近所のパン屋に小走りで向かっていました。
この頃「忙しい」がすっかり口ぐせになっていて、
頭の中は、仕事や家の、できていないこと、
次にやるべきことで常に頭がいっぱい。
しかもその日は、朝から寝坊したり、
家電の使いすぎでブレーカーが落ちたりと、
小さな失敗が続いていました。
まるで大根おろし器のようにトゲトゲした気持ちで
(じつはその前日、大根をおろしている時に
手を滑らせて指に擦り傷もつくっていました)、
そのパン屋に向かっていたのです。
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住宅街の中にあるパン屋は、お客さん一組で、
店内がいっぱいになるくらいの小さなお店。
次のお客さんは外で待っていなくてはいけません。
小走りで向かうと、おそらく近所のおばあちゃんと、
私より少し年上の女性、
そして私の3人がほぼ同時にお店の前に。
タッチの差で、最初に着いたのはおばあちゃん、
その次がもうひとりの女性だったので、
一番最後に並びました。
内心、「あぁ、あと30秒早く着いていれば、
待たずに済んだのに。今日はやっぱりツイていない」
なんて思ってしまった自分がいました。
それから5分もたたない頃でしょうか。
最初にお店に入ったおばあちゃんが、
目的のパンを買い、ドアを開けて出てきました。
すると丁寧なお辞儀とともに、
とってもやわらかい声でひと言。
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「どうも、お先でした」
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マスク姿で表情こそわからなかったけれど、
「(ありがとう)」と同じトーンで、
ごく自然に、外で待つ女性と私に声をかけたのです。
これまでにも何度かこのパン屋に
きたことはありましたが、
次のお客さんが外で並んでいても、
正直私はそそくさと無言で出てきてしまったり、
なんとなくお辞儀をするくらい。
なんだか、ものすごくハッとしました。
次に待っていた、もう一人の女性も、
その声かけに少しびっくりした様子ながら
「あ、いえいえ」と答えて、
お店の中へはいっていきました。
そして、その女性がパンを買い終え、
ドアを開けて出てきた時、
最初のおばあちゃんと同じ優しいトーンで、
「お先でした」と私に声をかけてくれたのです。
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「あ、なんか、いいな」と思いながら
自分のパンを買って、お店のドアを開けると、
今度は一人のおじさんが待っていました。
少しためらいつつも、真似をして言ってみました。
できるだけやわらかいトーンで、
先にパンを買わせてくれてありがとう
という気持ちを込めて、「お先でした」。
おじさんは、一瞬びっくりした様子で、
でもすぐ目尻を下げて
「いいえ、おいしいよね、ここのパン」とひと言。
「はい、おいしいですよね!」
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そんな、なんでもないやりとりをできたことが、
妙にうれしく、気分よく帰路につきました。
もしあの時、私が一番先にお店に着いていたら。
また、おばあちゃんの次に並んでいたとしても、
ふたりのような温かい「お先でした」は言えただろうか。
パン屋で3番目に並べて、
実はツイていた日だったのかも。
そんなふうに思えた出来事でした。
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(テキスト:スタッフ松田)
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2020/12/6