櫻田宗久さんのインスタグラム写真 - (櫻田宗久Instagram)「. 実感が伴わず、文章を書くのをためらっていた。昨年の12月に友人に映画監督の斎藤久志さんがお亡くなりになった事を聞いていました。斎藤監督の劇場デビュー作品の「フレンチドレッシング」私にとっても初めての主演映画で演技の経験も数本の作品に出演させてもらっていたくらいで、殆ど素人同然でした。 1997年の作品で、私は20歳だった。今観るとモゴモゴして何を言ってるのかわからないし、演技がうまい訳ではないが、そこに一人の実在した若い男は確実に存在しているようには見えた。斎藤監督から手取り足取り教えてもらいながら、対面する人との関係性とそこにある溝のようなもの、その距離感を大事に考えてほしいと言われたのを覚えている。その中でだんだん演技しているというよりも、ただそこにいて感じる感情の中に浸って勝手に身体が動いていくのを感じるようになっていった。現場で、カメラマンと監督が口論になっていたのも強く印象に残っている。監督は、口論が終わった後舌を横に出すような顔をして私を見た。 . 裸でラブホテルの廊下に放り出されたり、スカートを穿いて狂ったように踊らされたり、カットされていたが沖の海に放り込まれたり体当たりすぎるシーンの数々の中、斎藤監督はいつも冷静に見ていてくれる安心感があった。そんな父親は実際に知らないが、お父さんみたいな感じ。この時は、もう自分がゲイという事を認識して実生活の中でも同性のパートナーとお付き合いを始めたりしていましたが、会社との仕事の方針上まだカムアウトする事を認められておらず、現場でもヘテロセクシャルとしての振る舞いをしていた。この映画の中で私の役柄がゲイだった事もあって、その後ゲイということをカムアウトしてから、現場で自分がゲイとして意見を言うべきだったと後悔したりもしました。 2011年に私は新宿二丁目にバーを始めて、斎藤監督が新作のポスターを貼って欲しいとお店に遊びに来てくれた。斎藤監督に、あの時ゲイと言えなくてごめんねと伝えると俺こそ伝えてなかったことがあると言って、斎藤監督自身は秘密だと思っていた事を私に言ってくれた。「知ってたよ」と私が言うと、斎藤監督はびっくりした顔で舌を出し、二人で笑った。・ 2015年に新宿K’s cinemaにて斎藤久志特集上映の中「フレンチ・ドレッシング」は再上映され二人でトークショーをさせてもらった。映画にあの時あの場所にいたみんなが映って残っていた。斎藤監督、ありがとうございました。ご冥福をお祈り致します。フレンチ・ドレッシング（1997年）フレンチドレッシング 1998年7月25日（土）公開 / 上映時間：100分 / 製作：1997年（日本） / 配給：大映」1月11日 15時39分