平泉春奈さんのインスタグラム写真 - (平泉春奈Instagram)「⁡ 『柚子の特別な土曜日』 ⁡ ⁡ 私には5人の愛する男がいる。 ⁡ ◉月曜日の宗一郎さんはフレンチの経営者。成功していてもずっと謙虚な姿勢に心から尊敬している。 ◉火曜日の達郎くんは9歳年下の美容師。甘え上手で一緒にいるだけで癒される。 ◉水曜日の悟くんは不動産会社に勤務。愛情深くて乾いた心を満たしてくれる。 ◉木曜日の陸都くんはロックミュージシャン。何にも染まらない自分だけの世界を持っていて刺激的。 ◉日曜日の康介くんは外資系サラリーマン。一緒にいると学べることが多くてとても楽しい。 ⁡ みんなそれぞれ魅力的で大好きな人達。私は仕事が終わった後、曜日ごとに決まった相手に会いに行き、彼らと愛し合う。その瞬間は他の人を忘れ、目の前にいる彼だけを全力で愛した。 ⁡ 彼らには、関係性を決める時に私の恋愛スタイルを伝えていた。中には私と同じスタンスの相手もいたけれど、私だけを愛する人もいて、たまに苦しそうな顔をされるのが辛かった。 ⁡ “無理はしないでほしい” ⁡ 私が彼らに願うことはそれだけだ。執着と依存を捨て、ただ一心に愛を注ぎ、与えられる愛を余す事なく受け取る。それが私の愛し方。恋愛は苦しみながらするものではない。常に喜びと幸せな気持ちがなければ、成り立たないと思っている。 ⁡ ＊ ⁡ 最初の違和感は中学生の時だった。 ⁡ 同時に2人の異性を好きになった。でも周りはみんな好きな人は1人しかいなかった。なんで友達は何人いてもいいのに、恋愛対象は“1人だけ”じゃないとダメなのか分からなかった。そんなのおかしいと思った。でもそう思うのは自分だけで……おかしいのは制度じゃなくて自分なの？と悩んだ。 ⁡ それでも自分に正直でありたくて、好きになった人それぞれに好きだと伝えた。その噂は瞬く間に広がり、陰で“ビッチ”と言われるようになった。 ⁡ 病気なんじゃない？人としてどうかと思う。不誠実だよ。やりたい放題できていいね。そんなんじゃ幸せになれないよ。 ⁡ 自分の恋愛観を伝えるたびに、投げかけられる言葉は批判ばかり。自己肯定感は下がり続け、生きる意味すら見失った。私ってダメな人間なんだ。誰かを愛すればその相手を傷つけるだけなんだ。私なんて…… ⁡ 絶望的な気持ちに飲み込まれていた時、1人だけ私を受け入れてくれた友達がいた。それが、真琴だ。 ⁡ 「柚子。それってさ、ポリアモリーじゃない？」 ⁡ 私の愛の形には、名前があった。 ⁡ 「複数の人を愛せるって、すごく素敵なことだと思う。だって、それだけ沢山の人の魅力に気づけるってことでしょ？柚子が魅力的なのは、そういう愛し方ができる子だからだよ」 ⁡ 真琴はそう言って、「死にたい」と言って泣く21歳の頃の私を、優しく抱きしめてくれた。 ⁡ ＊ ⁡ 彼らと会わない金曜日と土曜日。その２日は出来る限り、ルームシェアしている真琴と過ごしたかった。彼女がいない日も、彼女の帰りを家で待っていたかった。 ⁡ 私の全てを知り、受け入れ、肯定し、好きでいてくれる大切な人。これからもずっと、こんな関係を続けていけるんだと思っていた。 ⁡ しかし、その日は突然やって来た。 ⁡ 「柚子。私、結婚するよ」 ⁡ 土曜の午後、真琴から突然言われた一言に目の前が真っ白になった。結婚？真琴が？この家を出るの？私と離れるってこと？嫌だ、そんなの……嫌！ ⁡ 真琴は黙り込む私をそっと覗き込む。 ⁡ 「柚子……？」 ⁡ なんで私は、大好きな人の幸せを素直に喜べないの？心が狭いから？傲慢だから？ ……違う。本当はとっくに気づいてた。気づかないふりしてただけ。 ⁡ 私は、真琴を…… ⁡ 心の中に優しい光が灯る。気持ちに名前がついた瞬間、長年こびりついていたシコリがぽろりと取れた。私はずっと、この気持ちに名前が欲しかったんだ。 ⁡ 胸が熱い。ああ……なんて、幸せなの。 ⁡ ⁡ 「真琴、結婚式のスピーチは絶対私にさせてね？」 ⁡ 私は真琴に精一杯の笑顔を向けた。真琴は泣きそうな顔で、私に抱きついた。 ⁡ 「柚子、ありがとう。大好き」 ⁡ ⁡ 真琴私を救ってくれた人私に愛を教えてくれた人誰よりも幸せになって欲しい人大好き大好きずっと、愛してる ⁡ ⁡ Fin. ⁡ ========= ⁡ 前回の作品『柚子と僕の水曜日』の続編でした。Instagramでは消されてしまったけどブログに再掲したので読んでない方は是非読んでみてね。 ⁡ 今回はポリアモリーという愛の形（＋バイセクシャル）を深く掘り下げて書いてみました。 ⁡ 理解されるのが難しい恋愛スタイルだと思います。だからこそ相手には真摯にその想いを伝え、誠実に向き合わないといけない。柚子はそういう意味でも「曜日」を決めて会う事で誰かに偏らないようにしていたのかもしれません。それが彼女なりの誠実さだったんじゃないか、という私なりの解釈でした。 ⁡ 少数派って生きづらい。でも間違ってない。マイノリティだからこそ、その特性とじっくり向き合い、自信を持って自分のスタイルを貫いてほしいです。ポリアモニーに限らず。 ⁡ ⁡ #ポリアモリー #恋愛小説 #挿絵 #イラストレーション #マイノリティ#バイセクシャル」3月15日 20時05分