岩下尚史のインスタグラム(iwashita_hisafumi) - 5月24日 23時38分

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東京新橋組合の御招きにて、第九十八回『東をどり』の千穐樂を拜見す。
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清元のしめやかなる清搔に、ふうはりと薄物の掛けを捌く加津代の三浦屋高尾は品（しな）よく艷ありて、味はひ濃やかなところは、そのかみの菊村頭取云ふところの新橋傳來の絹篩（きぬぶるひ）の藝にほかならず。
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『雛鶴三番叟』の和らかな壯美と『四君子』の清澄なる麗美は好い取りあはせ。三重子、七重、喜美勇、秀千代は立派にて、これに續く花形若手も健氣に見ゆ。
花柳宗家による『元禄花見踊』『柏の若葉』『高尾』『雪の幻想』は、現今の青年らしく常道を踏み、すでに櫓振附師の風韻あり。踊妓も揃ひ、若手も皆々見劣りなし。中でも大姐さん格の小いく、あやの『若菜摘』の足遣ひに年功を見留めけり。
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新橋でさへ外から地方を頼む時世なれど、長唄の照代、晶子､小玉、清元の美葉、ゆめ、小雪、木乃葉など、宴の座敷で繼承さるゝ藝妓ならではの喉と音締を守りたるは頼もしとおぼゆ。やすよをはじめ踊妓が島田髷にて出囃子を勤むるはめづらし、今後の試みなるや。
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双盤からチヨンパで新橋料亭大広間の景となるは吉例なれど、今年の襖繪はことのほか瀟酒にて結構なり。
靜香の口上よりつぎつぎに名妓へ渡されたあと、藝妓組合頭取の小喜美が手締の音頭を取り、すらりと立ちて黑地の江戸褄を曳く眺めは千兩。ゆつたりと白衿をあはせ、柳に結んだ帶腰の風情は嫋嫋として、今の世にかけがへのなき、新橋獨自の寶なり。
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そこへ左右に襖が引かれ、奧より鳶頭の拵へで颯爽と民があらはれた時には、ありし日のまり千代、小ひなの面影ばかりか、かつて千穐樂の口上幕に並ばれし五郎丸、小くに、ゆみ、小千代、清みなどと云ふ往時の歷々たる新橋芸妓の姿うつりて、薄なさけの我にも似合はず、ふと、さしぐむものあり。
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大正十四年このかた木挽町にて、東都の花と謳はるゝ東をどりも百回まで二年と聞けば、そのむかし制作に携はりし我も感慨を催し、銀座に咲き繼ぐ新橋花街の繁盛を祈りつゝ、古巢たる新橋演舞場をあとにしけり。
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