深夜空腹を伝えると爺やは丘から下界に向けセンチュリーを飛ばした。「爺、ウチの山から出てしまうよ!」「なぁに坊ちゃん、たまのことですよ。爺が怒られましょう、ほっほっほっ。」なにやら爺やの横顔は楽しそうだ。見慣れた景色はみるみる後方へ飛ばされ姿を変えていく。気付くと僕たちは都会の環状線に乗っていた。山にはない光、光、光…。こんな真夜中に人が歩いている。丘とはなにもかもが違う。ここで暮らす人々はなにを思い日々を送るのであろう。「さぁ着きましたよ坊ちゃん。」ハッと我に返るとセンチュリーは止まっていた。「じ、爺や、ここは…?」爺やはニヤリと笑い、「今日は坊ちゃんに尾道ラーメンを食べていただこうと思いまして。」そう告げた。「おのみち?なんだそれは…地名か?国名なのか?爺、おい爺や!」僕の言葉を背中で聞きながら爺はすたすたと店の扉へ向かってしまう。ちぇっ、今夜の爺はなんだか調子が狂うや。店に入るや否や爺やは「ラーメンふた丁お願いしますね!」と店員に告げた。もう決めてしまうのか?まだ席にも着いてないのに…。爺やと僕は粗末な作りのカウンターのパイプ椅子に腰を下ろした。ヒュウウウ。狭い店内のどこかから隙間風が吹いてくるようだ。「爺や、こ、ここは、その、大丈夫なのかい?」すると爺はくるりとこちらを向きまっすぐに僕の目を見つめた。「坊ちゃん。爺やは坊ちゃんのお毒見を38年間務めてまいりました。そこで今日は坊ちゃんに初めて私のお毒見なしの食事をしてほしゅうございます。」僕は焦った。「じ、爺!なにを言い出すんだい?こんな丘からはるか遠く離れた都会で、見ず知らずの人間が作る食事を僕に?」そう言い終わらないうちに爺は僕も始めて聞く大声をあげた。「坊ちゃん!坊ちゃんはもう38です!まだ奥方もお世継ぎもいらっしゃらず、毎日することと言えばご趣味の切手収集ばかり!お父様のお嘆きはいかばかりか!この爺にご子息の子守もさせてくださいませんのか!」僕は爺の目を見つめてただ黙っていた。爺の目には怒りにも悲しみにも似た、炎のような感情が渦巻いている。「ハーイすいませ〜ん、ラーメン二つお待ち!」僕たちのただならぬやりとりを知ってか知らずか、ことさら自然に店員の女性はカウンターにラーメンを置き去りにしていった。僕の目は爺からきらきらと光るラーメンへと焦点を変えた。「こ、これが…尾道ラーメン…。」爺はふっと笑顔に戻り、しかし目の淵に涙を溜めてこう言った。「坊ちゃん。今夜が、今夜が坊ちゃんのソロフライトですぞ!」僕はおずおずと割り箸を割り、もうもうと湯気の煙る丼に差し入れ、なにか高貴なもののように黄色くちぢれた中華麺を持ち上げた。ふぅふぅと二三度注意深く麺を冷まし、僕は爺の目を見た。爺は無言で頷いた。「テイクオフだね…爺…アムロ、アムロいっきまぁぁぁぁす!!!!」 …なんだこれ

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DABOのインスタグラム(fudatzkee) - 1月31日 01時10分


深夜空腹を伝えると爺やは丘から下界に向けセンチュリーを飛ばした。「爺、ウチの山から出てしまうよ!」「なぁに坊ちゃん、たまのことですよ。爺が怒られましょう、ほっほっほっ。」なにやら爺やの横顔は楽しそうだ。見慣れた景色はみるみる後方へ飛ばされ姿を変えていく。気付くと僕たちは都会の環状線に乗っていた。山にはない光、光、光…。こんな真夜中に人が歩いている。丘とはなにもかもが違う。ここで暮らす人々はなにを思い日々を送るのであろう。「さぁ着きましたよ坊ちゃん。」ハッと我に返るとセンチュリーは止まっていた。「じ、爺や、ここは…?」爺やはニヤリと笑い、「今日は坊ちゃんに尾道ラーメンを食べていただこうと思いまして。」そう告げた。「おのみち?なんだそれは…地名か?国名なのか?爺、おい爺や!」僕の言葉を背中で聞きながら爺はすたすたと店の扉へ向かってしまう。ちぇっ、今夜の爺はなんだか調子が狂うや。店に入るや否や爺やは「ラーメンふた丁お願いしますね!」と店員に告げた。もう決めてしまうのか?まだ席にも着いてないのに…。爺やと僕は粗末な作りのカウンターのパイプ椅子に腰を下ろした。ヒュウウウ。狭い店内のどこかから隙間風が吹いてくるようだ。「爺や、こ、ここは、その、大丈夫なのかい?」すると爺はくるりとこちらを向きまっすぐに僕の目を見つめた。「坊ちゃん。爺やは坊ちゃんのお毒見を38年間務めてまいりました。そこで今日は坊ちゃんに初めて私のお毒見なしの食事をしてほしゅうございます。」僕は焦った。「じ、爺!なにを言い出すんだい?こんな丘からはるか遠く離れた都会で、見ず知らずの人間が作る食事を僕に?」そう言い終わらないうちに爺は僕も始めて聞く大声をあげた。「坊ちゃん!坊ちゃんはもう38です!まだ奥方もお世継ぎもいらっしゃらず、毎日することと言えばご趣味の切手収集ばかり!お父様のお嘆きはいかばかりか!この爺にご子息の子守もさせてくださいませんのか!」僕は爺の目を見つめてただ黙っていた。爺の目には怒りにも悲しみにも似た、炎のような感情が渦巻いている。「ハーイすいませ〜ん、ラーメン二つお待ち!」僕たちのただならぬやりとりを知ってか知らずか、ことさら自然に店員の女性はカウンターにラーメンを置き去りにしていった。僕の目は爺からきらきらと光るラーメンへと焦点を変えた。「こ、これが…尾道ラーメン…。」爺はふっと笑顔に戻り、しかし目の淵に涙を溜めてこう言った。「坊ちゃん。今夜が、今夜が坊ちゃんのソロフライトですぞ!」僕はおずおずと割り箸を割り、もうもうと湯気の煙る丼に差し入れ、なにか高貴なもののように黄色くちぢれた中華麺を持ち上げた。ふぅふぅと二三度注意深く麺を冷まし、僕は爺の目を見た。爺は無言で頷いた。「テイクオフだね…爺…アムロ、アムロいっきまぁぁぁぁす!!!!」 …なんだこれ


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2013/1/31

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