シトウレイのインスタグラム(reishito) - 4月11日 01時16分
「なかなか暮れない夏の夕暮れ」江國香織:読了。
この物語は読書体験を、読書によって追体験するという重箱構造で物語は構成されてる。
つまり主人公の生きる世界(日本の、湿った夏。穏やかで静かで沢山の人に囲まれながらの、一人ぼっちの透徹な環境)と、主人公を読む本の中の世界(凍えるような冬のロシア、ミステリーかつハードボイルドで沢山の血が流れたりする)とを行ったり来たりする。
読書好きが折々感じる「読書世界に没頭してる真っ只中に、いきなり現実世界へ誘拐される感じ(しかも全然罪がない)の違和感あるある」がさっくり描かれている。
ところで。
江國さんによって紡がれる物語世界はいつもひんやりと静かで心が整う、と同時に埋めきれない寂しさが描かれてる。
どんなに近しい人であったとしても
ーーー肉親であれ血を分けた子供であれ、恋人であれ夫婦であれ友人であれ、かけがえのない仲間であれーーー
人と人との距離がゼロになることはない。
心を開きあい、お互いを分かり合うという事は基本的には幻想だ、という事が描かれている。
薄情かもだけど、でもこれはまぎれもない事実で、それを描く江國さんを私は誠実だと思う。付かず離れずのスタンスで、10代の頃から読んでいる人。
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2017/4/11
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