『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』の特撮監督を務めたダグラス・ドランブルの幻のSF映画・サイレントランニング(1972年作品)。以前、TVの映画番組で観てからどうにも忘れられずDVDを買った作品でした。観たあとに、こんな気持ちになるSF映画って他にあるんだろうか…宇宙人も、派手なドンパチも出てこない低予算映画シリーズの1本として制作されたこの作品には、キリスト教的な人間の原罪説が横たわっていて、そのなかでもがき苦しみながら、希望を持って生きようとするひとりの科学者と、ドローンと呼ばれるロボットの孤独な宇宙の旅が描かれる。 観ているあいだに思わず『なんちゅう孤独…』と呟いてすぐ、しかし時として人は、他者との折り合いがつかない中で感じる孤独と、どちらが本当に孤独なのだろう…なんてことも考えさせられてしまうのです。自分とは違う考え方の人を排除し尽くせば理想郷が生まれるかといえばそうではないのがこの世界。映画の背景となっている、なにもかもが管理されて、疫病も失業もなくなったという人工的な未来の地球は、まさにそれを示唆しているのかもしれません。 理想郷-ユートピアとは、イギリスの作家トマス・モアが1516年に著した同名の著書から生まれた造語で『素晴らしいがこの世のどこにもない場所』という、ちょっと薄ら怖い意味を持っている。 サイレントランニングには、ユートピアという言葉を聞くたびに感じる違和感と怖さにプラスして、それでも理想を追い求めずにはいられない人間らしい不完全な苦悩と、不思議な温かみを観るたびに感じてしまう。無機質な宇宙で流れるジョーン・バエズの主題歌がこれまた秀逸で心に染みるのよな〜… 。 しかし、現代SF映画には当たり前にある高度な映像技術は、映画の良し悪しにほとんど関係がないんじゃないかって、この時代の名作SFを観るたびに思ってしまうな。むしろアナログな表現だからこそなし得ていることの方が多いんじゃないかって。? 兎にも角にも、この映画は私にとって『2001年宇宙の旅』と並ぶ、心の大傑作SF映画なのです。 #猫沢映画館

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猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 2月6日 02時46分


『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』の特撮監督を務めたダグラス・ドランブルの幻のSF映画・サイレントランニング(1972年作品)。以前、TVの映画番組で観てからどうにも忘れられずDVDを買った作品でした。観たあとに、こんな気持ちになるSF映画って他にあるんだろうか…宇宙人も、派手なドンパチも出てこない低予算映画シリーズの1本として制作されたこの作品には、キリスト教的な人間の原罪説が横たわっていて、そのなかでもがき苦しみながら、希望を持って生きようとするひとりの科学者と、ドローンと呼ばれるロボットの孤独な宇宙の旅が描かれる。

観ているあいだに思わず『なんちゅう孤独…』と呟いてすぐ、しかし時として人は、他者との折り合いがつかない中で感じる孤独と、どちらが本当に孤独なのだろう…なんてことも考えさせられてしまうのです。自分とは違う考え方の人を排除し尽くせば理想郷が生まれるかといえばそうではないのがこの世界。映画の背景となっている、なにもかもが管理されて、疫病も失業もなくなったという人工的な未来の地球は、まさにそれを示唆しているのかもしれません。
理想郷-ユートピアとは、イギリスの作家トマス・モアが1516年に著した同名の著書から生まれた造語で『素晴らしいがこの世のどこにもない場所』という、ちょっと薄ら怖い意味を持っている。

サイレントランニングには、ユートピアという言葉を聞くたびに感じる違和感と怖さにプラスして、それでも理想を追い求めずにはいられない人間らしい不完全な苦悩と、不思議な温かみを観るたびに感じてしまう。無機質な宇宙で流れるジョーン・バエズの主題歌がこれまた秀逸で心に染みるのよな〜… 。

しかし、現代SF映画には当たり前にある高度な映像技術は、映画の良し悪しにほとんど関係がないんじゃないかって、この時代の名作SFを観るたびに思ってしまうな。むしろアナログな表現だからこそなし得ていることの方が多いんじゃないかって。? 兎にも角にも、この映画は私にとって『2001年宇宙の旅』と並ぶ、心の大傑作SF映画なのです。

#猫沢映画館


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2018/2/6

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