大下ヒロトさんのインスタグラム写真 - (大下ヒロトInstagram)「青春日記【山際君の引っ越し。】 山際君が1ヶ月の韓国の仕事を終えて、日本に帰って来た。帰って来て直ぐ、「明日、引っ越しをするから手伝ってほしい」と連絡が来た。引っ越しの前日、お酒を飲んでいた僕は、午前10時に携帯から鳴り響くアラームは簡単に無視する事が出来た。 山際君から電話が来た。 「おはよー。起きてる?」 「うん。起きてる。」 「今日頼むよ」 電話が切れた。 よし。後少しだけ寝よう。後10分だけ寝て、準備をしよう。そう思い、目を閉じる。 5分後、山際君から電話が来た。 「起きてる?」 「起きてる。あのさ、今日って何人くらいいる?結構僕は必要な感じかな」 「今はヒロト合わせて3人。絶対必要。頼む。起きて。」 僕が2度寝をする事なんて、彼にとっては全てお見通しなのだ。 シャワーを浴びて、家を出る。久し振りに乗る僕のスーパーカブは全くエンジンがかからなくて、キックペダルを何度も踏み込む。そして、徐々にゴッゴッゴッという音を立ててエンジンがかかった。 スーパーカブをひたすら走らせ、方南町に着いた。久し振りに来た方南町は、お店や駅が少しだけ変わっていた。山際君の引っ越す家に到着すると、家の前に山際君が立っていた。僕はいつもの様に彼の隣を無反応で通り過ぎるというボケ(山際君と会う時は、お互いこのよくわからないボケをするのが恒例行事なのだ)をした。いつもの様に、ツッコミが無いと思って振り返ると、そこに居たのは山際君ではなく、山際君の兄だった。(どちらも山際なのだが) 恥ずかしかった。にしても立ち方がそっくりすぎるだろ。 「おはよう」と声が聞こえると2階に本物の山際君が居た。(どちらも本物の山際なのだが)1ヶ月ぶりの山際君は黒のサングラスを付けていた。どうやら韓国で買ってきたサングラスらしくて、僕がそれを付けると「それちょっと高いやつだから気を付けてよ」なんて腹が立つことを言っていた。 部屋はほとんど何もなかった。大体の荷物がダンボールとゴミ袋にまとめられていた。ゴミ袋には、大量のもう使わない物が捨てられていた。これは山際君の凄いところの1つだと思う。山際君は、必要ないと思ったらすぐ物を捨てることが出来る。そういう思い出に対して、全く感情を出さないのだ。例えば、こんな思い出がある。東京に引っ越す為の荷造りをしている時に山際君に怒られたことがある。僕は今まで貰った手紙を東京に持って行きたいと言った。すると山際君は「思い出に頼ってんじゃねーよ。全部捨てちまえ」と言って手紙達を勝手に捨てたのだ。なんてやつなんだ。  山際君は、高校を卒業してから4年間、この部屋に住んでいた。山際君は鍵をかけるという概念が無く、僕はいつだって、自分の家のようにこの部屋に帰ることが出来た。そんな第2の家でもあるこの部屋も今日で終わり。ただの、思い出になるのだ。 深呼吸をする。深呼吸をするのは、この部屋に染み付いている僕らの思い出が、あまりにも多く、それが走馬灯の様に浮かんできては、僕の胸を締め付けすぎるからだ。 深呼吸をした。深呼吸をすると、変な臭いがした。後ろにいる山際君に 「変な臭いがするんだけど、これなんの臭い?」 と聞くとヘラヘラしながら 「あ、バレちゃった?冷蔵庫腐っちゃってるから」 と言っていた。 聞いてみると、山際君が韓国にいる1ヶ月間、この部屋は電気が止まっていたらしい。それで冷蔵庫の物が全て腐っているのだ。 そして、僕は今からこの腐った冷蔵庫を彼に運ばされようとしているのだ。 冷蔵庫からは、汁が大量に垂れていて、僕らはそれを"臭汁"(くさじる)と呼んだ。 2人で冷蔵庫を外まで運んだ。運ぶ途中、その臭汁が手や服に付き、本当に地獄だった。けど、本当の地獄はこれからなのだ。このまま新居に持って行っても臭汁が垂れて臭汁まみれになってしまう。そう、ここでこの臭汁を始末するしかないのだ。 もちろん僕は冷蔵庫の中にいる黒い物を取り出す気は全く無いので、その仕事は山際君に任せてスーパー袋でその黒い物を受け取る係をした。2人で嗚咽しながら、なんとか終わらせた。終わった後、山際君は何度か自分の指の臭いを嗅いでいた。聞いてみると「ちょっとクセになる臭いなんだよな」と言っていた。分かる。僕もさっきから服についていた臭汁の臭いを何度も嗅いでしまっている。 さようなら。臭汁。さようなら方南町。  山際君の新居に着いた。 荷物を部屋に入れていると、どこからか音が聞こえた。上を向くと、2階のおじさんが楽器を弾いていた。聞いたことがない音だった。僕らの角度からは、その楽器が何なのか確認出来なかったのだけど、その音は本当に、優しい音だった。僕らはその音に耳を澄ませた。目を閉じて、その音楽を聞いている山際君の表情は、新しい街に来た事をしっかりと感じている様子だった。 その後、皆んなで居酒屋に行った。山際君の兄がキムチを頼もうとすると、山際君は「キムチに金を払って食う気はない」と言い出した。どうやら、韓国ではキムチが当たり前のように無料で出てくるらしい。一生、韓国に住んでいろ。と思った。結局、美味しそうに食べてたけど。 #大下ヒロト青春日記」11月17日 3時48分 - hiroto_mitsuyo

大下ヒロトのインスタグラム(hiroto_mitsuyo) - 11月17日 03時48分


青春日記【山際君の引っ越し。】
山際君が1ヶ月の韓国の仕事を終えて、日本に帰って来た。帰って来て直ぐ、「明日、引っ越しをするから手伝ってほしい」と連絡が来た。引っ越しの前日、お酒を飲んでいた僕は、午前10時に携帯から鳴り響くアラームは簡単に無視する事が出来た。
山際君から電話が来た。
「おはよー。起きてる?」
「うん。起きてる。」
「今日頼むよ」
電話が切れた。
よし。後少しだけ寝よう。後10分だけ寝て、準備をしよう。そう思い、目を閉じる。
5分後、山際君から電話が来た。
「起きてる?」
「起きてる。あのさ、今日って何人くらいいる?結構僕は必要な感じかな」
「今はヒロト合わせて3人。絶対必要。頼む。起きて。」
僕が2度寝をする事なんて、彼にとっては全てお見通しなのだ。
シャワーを浴びて、家を出る。久し振りに乗る僕のスーパーカブは全くエンジンがかからなくて、キックペダルを何度も踏み込む。そして、徐々にゴッゴッゴッという音を立ててエンジンがかかった。
スーパーカブをひたすら走らせ、方南町に着いた。久し振りに来た方南町は、お店や駅が少しだけ変わっていた。山際君の引っ越す家に到着すると、家の前に山際君が立っていた。僕はいつもの様に彼の隣を無反応で通り過ぎるというボケ(山際君と会う時は、お互いこのよくわからないボケをするのが恒例行事なのだ)をした。いつもの様に、ツッコミが無いと思って振り返ると、そこに居たのは山際君ではなく、山際君の兄だった。(どちらも山際なのだが)
恥ずかしかった。にしても立ち方がそっくりすぎるだろ。
「おはよう」と声が聞こえると2階に本物の山際君が居た。(どちらも本物の山際なのだが)1ヶ月ぶりの山際君は黒のサングラスを付けていた。どうやら韓国で買ってきたサングラスらしくて、僕がそれを付けると「それちょっと高いやつだから気を付けてよ」なんて腹が立つことを言っていた。
部屋はほとんど何もなかった。大体の荷物がダンボールとゴミ袋にまとめられていた。ゴミ袋には、大量のもう使わない物が捨てられていた。これは山際君の凄いところの1つだと思う。山際君は、必要ないと思ったらすぐ物を捨てることが出来る。そういう思い出に対して、全く感情を出さないのだ。例えば、こんな思い出がある。東京に引っ越す為の荷造りをしている時に山際君に怒られたことがある。僕は今まで貰った手紙を東京に持って行きたいと言った。すると山際君は「思い出に頼ってんじゃねーよ。全部捨てちまえ」と言って手紙達を勝手に捨てたのだ。なんてやつなんだ。

山際君は、高校を卒業してから4年間、この部屋に住んでいた。山際君は鍵をかけるという概念が無く、僕はいつだって、自分の家のようにこの部屋に帰ることが出来た。そんな第2の家でもあるこの部屋も今日で終わり。ただの、思い出になるのだ。
深呼吸をする。深呼吸をするのは、この部屋に染み付いている僕らの思い出が、あまりにも多く、それが走馬灯の様に浮かんできては、僕の胸を締め付けすぎるからだ。
深呼吸をした。深呼吸をすると、変な臭いがした。後ろにいる山際君に
「変な臭いがするんだけど、これなんの臭い?」
と聞くとヘラヘラしながら
「あ、バレちゃった?冷蔵庫腐っちゃってるから」
と言っていた。
聞いてみると、山際君が韓国にいる1ヶ月間、この部屋は電気が止まっていたらしい。それで冷蔵庫の物が全て腐っているのだ。
そして、僕は今からこの腐った冷蔵庫を彼に運ばされようとしているのだ。
冷蔵庫からは、汁が大量に垂れていて、僕らはそれを"臭汁"(くさじる)と呼んだ。
2人で冷蔵庫を外まで運んだ。運ぶ途中、その臭汁が手や服に付き、本当に地獄だった。けど、本当の地獄はこれからなのだ。このまま新居に持って行っても臭汁が垂れて臭汁まみれになってしまう。そう、ここでこの臭汁を始末するしかないのだ。
もちろん僕は冷蔵庫の中にいる黒い物を取り出す気は全く無いので、その仕事は山際君に任せてスーパー袋でその黒い物を受け取る係をした。2人で嗚咽しながら、なんとか終わらせた。終わった後、山際君は何度か自分の指の臭いを嗅いでいた。聞いてみると「ちょっとクセになる臭いなんだよな」と言っていた。分かる。僕もさっきから服についていた臭汁の臭いを何度も嗅いでしまっている。
さようなら。臭汁。さようなら方南町。

山際君の新居に着いた。
荷物を部屋に入れていると、どこからか音が聞こえた。上を向くと、2階のおじさんが楽器を弾いていた。聞いたことがない音だった。僕らの角度からは、その楽器が何なのか確認出来なかったのだけど、その音は本当に、優しい音だった。僕らはその音に耳を澄ませた。目を閉じて、その音楽を聞いている山際君の表情は、新しい街に来た事をしっかりと感じている様子だった。
その後、皆んなで居酒屋に行った。山際君の兄がキムチを頼もうとすると、山際君は「キムチに金を払って食う気はない」と言い出した。どうやら、韓国ではキムチが当たり前のように無料で出てくるらしい。一生、韓国に住んでいろ。と思った。結局、美味しそうに食べてたけど。
#大下ヒロト青春日記


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2019/11/17

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