立教大学のインスタグラム(rikkyouniv) - 5月10日 16時36分


量子電磁力学をエキゾチック原子で検証
—ミュオン特性X線エネルギーの精密測定に成功—

理化学研究所(理研)開拓研究本部東原子分子物理研究室の奥村拓馬特別研究員(研究当時、現東京都立大学理学研究科化学専攻助教)、東俊行主任研究員、日本原子力研究開発機構の橋本直研究副主幹、東京都立大学の竜野秀行客員研究員、立教大学の山田真也准教授、カスラー・ブロッセル研究所のポール・インデリカート教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の高橋忠幸教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の下村浩一郎教授、中部大学の岡田信二准教授(研究当時、現教授)らの国際共同研究グループは、最先端のX線検出器である超伝導転移端マイクロカロリメータ(TES)[1]を用いて、負ミュオン[2]と原子核からなる「ミュオン原子[2]」から放出される「ミュオン特性X線[3]」のエネルギースペクトルを精密に測定し、強電場量子電磁力学[4]をエキゾチック原子[5]で検証するための原理検証実験に成功しました。

本研究成果は、人類がいまだ人工的には作り出せない超強電場下における基礎物理法則の検証に向けた大きな一歩です。本研究により実証された最先端量子技術による高効率かつ高精度なX線エネルギー決定法は、ミュオン原子を用いた非破壊元素分析法[6]などさまざまな研究分野への応用が期待できます。

今回、国際共同研究グループは大強度陽子加速器施設「J-PARC」[7]で得られる低速負ミュオンビームをネオン(Ne)気体に照射し、生成されたミュオン原子(ミュオンNe原子)が放出するミュオン特性X線のエネルギーを、TES検出器を使って精密測定しました。TES検出器の高いエネルギー分解能を最大限に活用することで、ミュオン特性X線のエネルギーを、1万分の1を下回る絶対精度で決定し、強電場量子電磁力学における真空分極[8]の効果を5.8%という極めて高い精度で検証することに成功しました。

本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(4月27日付)に掲載されました。

背景
自然はどのような物理法則に従うのか、それを解き明かすことこそ科学者が抱える長年の夢です。新たな物理法則は、既存の理論では理解できない現象や観測数値を説明するために見いだされてきました。多くの場合、新しい物理の発見には、新実験手法の開発や測定精度の向上が不可欠です。人類が見いだしてきた物理法則の中で最も精密に検証されている理論が、電荷を持つ粒子と光の間のミクロな相互作用を記述する「量子電磁力学(Quantum ElectroDynamics:QED)」です。例えば、現在、陽子と電子という最も簡単な構成の原子である水素原子の遷移エネルギー[9]について、QEDを含んだ理論計算が14桁(100兆分の1)もの精度で実験的に検証されています。QEDはどこまで正しい物理理論なのか、その限界を求めて科学者は日々挑戦を続けています。

QEDの効果は電場が強い環境でより顕著に現れますが、一方で理論計算は難しくなります。そのため、強電場環境はQED検証の舞台として非常に重要です。これまで、強電場環境を実現する方法として、複数の電子が剥ぎ取られた重原子である「多価重イオン」を用いた実験が長年進められてきました。原子番号が大きくなり、多くの電子を剥ぎ取ることで遮蔽効果[10]が抑制されるため、多価イオン内に残された電子が感じる電場は強くなります。このため、大型加速器を用いて多価重イオンを作る研究が現在も精力的に進められています。しかし、原子番号が大きい多価重イオンでも、およそ1フェムトメートル(1,000兆分の1メートル)と小さくても原子核の大きさの影響が無視できません。この効果は正確に知られていないため、実験結果と理論を比較するQED検証の精度が大きく損なわれることが指摘されています。

https://www.rikkyo.ac.jp/news/2023/05/mknpps0000026ax7.html


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2023/5/10

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