偕成社のインスタグラム(kaiseisha_pr) - 9月11日 12時01分

イカルは次の品の確認に取りかかるまえに、開いた台帳にざっと目を通してみた。
　博物館からの収蔵品を書き出した台帳には、実にさまざまな品名が並んでいた。
　刀剣があるかと思えば陶磁器があり、漆器きもあれば書画もある。仏像があるかと思えば、それこそ木乃伊や動物の剥製もまじっていた。
　不思議になって、イカルはアキラにたずねた。
「あのう……。この蔵くらは、なにをしまっておく蔵なんでしょう？　この台帳によると、えらい、いろんなものが運びこまれてるみたいなんですけど……」
　アキラが答える。
「寛永寺の蔵だったころには、学問所が研究のために集めた標本類や資料類がしまわれていたんだけど、博物館の蔵になってからは、ほかにやり場のないやっかいものの、一時保管場所みたいにして使われてるらしい。もともとの収蔵品を押しのけて、いらない品物をごたごた押しこんでいるって、トノサマは機嫌が悪いんだ」
「ほかにやり場のないやっかいもの、というのは、どういうものですか？」
　イカルはよけいにわからなくなって、台帳から目をあげ、アキラを見た。

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