偕成社のインスタグラム(kaiseisha_pr) - 11月7日 10時17分

もし、ケーキがひとつしかなかったとすると、しずかさんとわたしは目に力をこめて、じとーっとながめます。それから、この母親は裁判官みたいに、きちんとすわっていいます。
「切るわよ。」
そこで、わたしは先制攻撃に出ます。
「あっ、ちょっと待って、わたし、育ちざかりなんですけど……」
「それでしたら、わたしもちょうど太りざかりなんです。」
しずかさんはすましていいます。
「戦争のときは、子どもに食べものをゆずって餓死した母親もいたそうですよ。」
「あっ、そうですか。あなたは母なし子になりたいというわけですか。」
　このように、なんといおうが、だめなのです。
　ケーキは正確に二等分されます。いくら正確に二等分といっても、こころもち大きいということはあるもので、とろうとするふたりの手は、いつもおなじところにいってしまいます。

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