平野紗季子さんのインスタグラム写真 - (平野紗季子Instagram)「小学生の頃、図書室にあった「どれい船のゆくえ」という本を読んだ。どれいという概念、コロンブスの所業(偉大な探検家じゃなかったの?)、びっしりと人型が書き込まれた帆船の俯瞰図のイラストのあまりのおぞましさに、そのあと何度も夢を見た。悪夢。ならば醒めればいい。だけどこれは事実として起こった人間の人間に対する最悪の残虐行為で、それから数百年経った今も、今この瞬間も、痛みは消えずに当事者を傷つけ続けてる。その途方もなさ、構造的差別の根深さ、彼らから希望を奪うのは実際に誰であり何なのか……を学び考えるけれど涼しい部屋からただ頭を抱えることの愚かさに行き詰って口をつぐみそうになる。でもそこで思い出すのは負の歴史を学ぶたびに「残念ながら人類は不幸な歴史を歩むようになっているので」とか「WWⅢは必ず起こる」とか言ってた先生や大人で、あれはマジでなんだったの?と今は思う。知的な諦念が世界を少しでもマシな方向に変えることができたんだろうか。そんなはずはないだろう、そう思うから、私は私なりの方法で彼らに連帯を示したい。私は人種主義とそれによってもたらされる差別や残虐行為に断固反対する。同時にこれまで自国におけるあらゆる差別について見聞きしながら声を上げようとしなかったことを考える。声を上げることなく生き延びてこれた自分の境遇とそれゆえの愚かさと向き合う。それらを省みながら(本当に自分にがっかりすることが多すぎるけど…)、もっとマシな世界のためにできることをしていきたい。でもどんなに世界の現実に目を見開き続けようとしても、無限にあらゆる問題に連帯の意を表すことは難しくてそれが有効かどうかも分からなくて、じゃあどうしたらいいのだろと思う時、自分の持ち場から全力でマシな未来に向けてできることを頑張りまくるしかないよなあと思う。 ・ 「Jubilee」という本があります。今差し迫って触れるべき言葉や映像は他にたくさんあるしレシピ本なんてお花畑かよと思われるかもしれないけれど、これはアフリカンアメリカンの人々が残してきた200年に渡るレシピとその歴史的背景を一冊にまとめたものです。著者のトニ・ティプトン=マーティンさんはアフリカンアメリカンの料理史を研究する活動家で、前作の「The Jemima Code」から”パンケーキのジェミマおばさん”に代表される黒人料理=南部の素朴なソウルフードという狭義のステレオタイプを覆し、歴史の中に埋れた名もなき人々による、しかしたしかにアメリカ料理を形作ってきた数多くの、いわば”サイレントフード”とも言えるようなレシピを、膨大な資料から丁寧に掘り起こし、そっと今に置き直す仕事をしてきた方です。 “これは先祖が私たちに残してくれた、解放や回復力、そして自由を祝うレシピです”。私はこの本を読んで初めて南部料理の固定概念から抜け出すことができたし、彼らの食への知識や食材の来歴やそれをどのように美味へと昇華させていくかといった創造性をレシピから感じることは、大文字の歴史からは見通せなかった個人の生の証に触れていくことのように思えました。こういった記録にこそ食文化の真髄が、政治的・経済的・文化的な優位に立った人たちによって残されてきた数多の立派な食の記録以上に、宿っているようにすら思えたのです。 ・ 自分の人生はどんなふうに使っていけるだろうか。いや、答えとかないけど。そしていちいち自分語りしないと気が済まない自分が恥ずかしいけど。でも、一つだけわかっていることは、私は、現実から逃避するための食だけではなく、現実を直視するための、そしてそれを乗り越えるための食と向き合っていきたいということだ。」6月6日 14時16分 - sakikohirano

平野紗季子のインスタグラム(sakikohirano) - 6月6日 14時16分


小学生の頃、図書室にあった「どれい船のゆくえ」という本を読んだ。どれいという概念、コロンブスの所業(偉大な探検家じゃなかったの?)、びっしりと人型が書き込まれた帆船の俯瞰図のイラストのあまりのおぞましさに、そのあと何度も夢を見た。悪夢。ならば醒めればいい。だけどこれは事実として起こった人間の人間に対する最悪の残虐行為で、それから数百年経った今も、今この瞬間も、痛みは消えずに当事者を傷つけ続けてる。その途方もなさ、構造的差別の根深さ、彼らから希望を奪うのは実際に誰であり何なのか……を学び考えるけれど涼しい部屋からただ頭を抱えることの愚かさに行き詰って口をつぐみそうになる。でもそこで思い出すのは負の歴史を学ぶたびに「残念ながら人類は不幸な歴史を歩むようになっているので」とか「WWⅢは必ず起こる」とか言ってた先生や大人で、あれはマジでなんだったの?と今は思う。知的な諦念が世界を少しでもマシな方向に変えることができたんだろうか。そんなはずはないだろう、そう思うから、私は私なりの方法で彼らに連帯を示したい。私は人種主義とそれによってもたらされる差別や残虐行為に断固反対する。同時にこれまで自国におけるあらゆる差別について見聞きしながら声を上げようとしなかったことを考える。声を上げることなく生き延びてこれた自分の境遇とそれゆえの愚かさと向き合う。それらを省みながら(本当に自分にがっかりすることが多すぎるけど…)、もっとマシな世界のためにできることをしていきたい。でもどんなに世界の現実に目を見開き続けようとしても、無限にあらゆる問題に連帯の意を表すことは難しくてそれが有効かどうかも分からなくて、じゃあどうしたらいいのだろと思う時、自分の持ち場から全力でマシな未来に向けてできることを頑張りまくるしかないよなあと思う。

「Jubilee」という本があります。今差し迫って触れるべき言葉や映像は他にたくさんあるしレシピ本なんてお花畑かよと思われるかもしれないけれど、これはアフリカンアメリカンの人々が残してきた200年に渡るレシピとその歴史的背景を一冊にまとめたものです。著者のトニ・ティプトン=マーティンさんはアフリカンアメリカンの料理史を研究する活動家で、前作の「The Jemima Code」から”パンケーキのジェミマおばさん”に代表される黒人料理=南部の素朴なソウルフードという狭義のステレオタイプを覆し、歴史の中に埋れた名もなき人々による、しかしたしかにアメリカ料理を形作ってきた数多くの、いわば”サイレントフード”とも言えるようなレシピを、膨大な資料から丁寧に掘り起こし、そっと今に置き直す仕事をしてきた方です。 “これは先祖が私たちに残してくれた、解放や回復力、そして自由を祝うレシピです”。私はこの本を読んで初めて南部料理の固定概念から抜け出すことができたし、彼らの食への知識や食材の来歴やそれをどのように美味へと昇華させていくかといった創造性をレシピから感じることは、大文字の歴史からは見通せなかった個人の生の証に触れていくことのように思えました。こういった記録にこそ食文化の真髄が、政治的・経済的・文化的な優位に立った人たちによって残されてきた数多の立派な食の記録以上に、宿っているようにすら思えたのです。

自分の人生はどんなふうに使っていけるだろうか。いや、答えとかないけど。そしていちいち自分語りしないと気が済まない自分が恥ずかしいけど。でも、一つだけわかっていることは、私は、現実から逃避するための食だけではなく、現実を直視するための、そしてそれを乗り越えるための食と向き合っていきたいということだ。


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2020/6/6

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