平泉春奈のインスタグラム(hiraizumiharuna0204) - 7月6日 19時58分

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『生まれてきた理由』


「ねえ、人はなんで生まれてくるんだと思う？」
「……何、急に」
「私ね、最近すごく思うの。たった一つの幸せの為に、この世界に生まれてきたんだなって」
「……」
「毎日沢山の小さな幸せはあるけど、それってだんだん当たり前になって、それが幸せなんだっていう感覚は忘れちゃうじゃない？でもね、絶対に忘れない幸せって、1つだけあるって思うんだ。」
「……なにそれ」
「ふふっ。きっと、"死"を意識して初めて気づくことなのかも」
「……」
「私にとっては"あなた"がそうなの」
「……っ」
「あなたに出会えたこと、あなたと生きてこれたことが、私にとって幸せだったんだなって」
「……もうやめろよ」
「ありがとう。ずっと一緒にいてくれて」
「やめろって」
「私、生まれてきて良かった。あなたに……出会えたから」
「……お願いだからっ……もう……」
「……泣かないで」
「……」
「来て。触りたい……」
「ん……」
「温かいなあ……人の体温って、温かい」
「俺はもっと沢山、この先もずっと、お前と一緒にいたいよ……いたかったよ……」
「ごめんね……」
「ばか、謝んな……」
「うん……ね、お願いがあるんだけど」
「……ん？」
「最後の瞬間は笑ってほしい」
「……」
「あなたの笑顔を見て、逝きたい」
「そんなの……できるわけ……」
「ね、最後の約束」
「ひでえヤツ」
「あははっ、ごめんごめん」
「はあ～……お前にはほんと敵わないわ……」


彼女が余命3ヶ月と宣告されてから
今日でちょうど3ヶ月だった。
今この瞬間も、彼女の体温は俺と変わらない位温かい。

全てが夢だったらいいのに
そう毎日祈るような気持ちで朝を迎えた。
明日が来なければいい
このままずっと時間が止まればいい。
そんな願いも空しく
時間は残酷に時を刻み続けた。

彼女との最後の約束は守れるだろうか。
いや、無理だろう。
でもきっと彼女はいつもと変わらない笑顔で
「もう、しょうがないなあ」と許してくれる気がする。
強くて優しい彼女は
最後の瞬間までそんな風にして俺の心を癒し、
奪っていくんだろうな。


俺は、更に強い力で彼女を抱きしめた。
彼女の体温と鼓動を身体に覚えさせるように。


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死を意識した時、自分にとってすごく大切なものが明確な形になるんじゃないかなと感じます。この物語を書きながら、自分が生まれてきた意味、生きていく理由について、改めて考えたいなと思いました。



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