猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 10月18日 10時54分


《パリ・盗難日記 / 6日目》後編

ふみこ姐と Appleで、昨日品定めしておいた機種の購入に入った。ところが、見たことのない支払い確認のメッセージが来て、一瞬慌てふためく。私はてっきり、またこの私が不運を連れてきてしまったんではないかと本気で心配するも、最終的には無事に決済できてiPhoneを手に入れるに至った。本当に、友達というのはなんとありがたい存在か。

次の問題は、再申請をかけておいた新しいSIMカードだった。今朝、ポストを覗いたら封筒が入っていて、おそらくSIMが到着しているのだけど、なんと盗まれたキーホルダーにはポストを開ける鍵もついていたという🫠今夜、住宅保険の申請について説明しにくる予定の大家のポーリーヌに連絡してみると「家に帰って確認してみないとわからないけど、スペアキーがあったかどうか…….」。あゝ!バカ!自分のアンポンタン!なぜポストの鍵なんか持ち歩いていたのかなんていうしても無駄な自責は意味がない。

ならば、自ら泥棒になりましょう!

幸いにもうちのポストは底が浅く、扉の上部には私の指が差し込めるだけの開口部があるから、なにか道具を使えば、中の封筒1通くらいは取り出せそうな気配だった。考えた私は、まず猫じゃすりの先に丸めたガムテープを貼り付けて、そーっと開口部から手紙をくっつけようと試みたが、じゃすりでは長さが足りず、次はフライ返し、しかしこれもNG。最後に日本の菜箸を使ってみたら、見事取り出せた!

しかし、菜箸をポストに突っ込んでいる謎の東洋人はどこから見ても果てしなく怪しく、住人が来はしないかと始終ビクビクしている自分、哀しい!何が哀しいって、泥棒された人が自分ちのポストを泥棒せざるを得ないこのクソミソなシチュエーションが!

茫漠とした虚しさが胸に満ち満ちて、如何ともし難い気持ちまで高まった時、突然鞭打つように原稿を書き始めた。もう仕事すらも、この耐え難い心境を放置しないためならば、楽しいアトラクションの何物でもないところまで到達。

夜、大家のポーリーヌがやってきた。

「あったわよ!ポストのスペアキー」

よ、よかった……😭 ひとつ、安堵。私はまた、先日の鍵職人を呼んで壊すなり交換なり、もしくは住戸分が一体型になっているのポスト全部を私が取り替えねばならなくなるとか⁉️😭と、内心怯えていたから。

「エミは1年半、ラッキーだった。そして、まとめてドカンときた!」

とポーリーヌは言った。その通りだと思った。ここまでの奇跡のような幸運の数々は、彼にも「平穏すぎてちょっと不安」と漏らすほど、穏やかな日々だった。ここいらで人生がバランスを取ろうとしているのかもしれない。幸運と不運のバランスを。

「鍵問題はひとまず早急に解決できたから、急場は脱したよね。あとの手続きはどうせ時間もかかるし、ゆっくりでいいと思う」と、凛としてカッコいいパリジェンヌのポーリーヌは帰って行った。ポーリーヌに言われると、さっと納得できて、心がすっと静まる感じ。

こんなときフランス人はÇa arrive, c’est la vie.-サ・アリーヴ、セ・ら・ヴィ/ こういうことはありえるよ。人生だもん。って言う。そうだ。ありえないことなんか、人生にひとつもないんだった。

ちなみにせっかく泥棒まがいの菜箸戦法で取り出したSIMは、なんらかの問題でサイトにアクセスできず、アクティベートできていない。でももう、今日は疲れたからどうでもいいや……そう思いながら歯を磨いていたら、突然被せ物がパーン!と勢いよく外れて、洗面台の排水溝の幅ギリギリに引っかかった。

追い打ちをかける泣きっ面に蜂加減が、もうどうしようもないほどトンマすぎて、アハハハハハ……..と笑ったら、鏡の中の女は歯抜けだった。

昼間活躍した菜箸を持ってきて、そーっとつまんで取ろうと目論見たが、お約束通りに排水溝へ吸い込まれていった。

私は虚しさと並んで、深夜にこれを書いている。ラジオからはビートルズの〝ノルウェーの森〟が流れている。

あと5分で日本の問い合わせセンターが始動する。深い闇に飲まれたものたちの再生作業はまだまだ続く。

森は想像よりも、深い。

※オペラのAppleでふみこ姐のカード決済時、一瞬悪夢がよぎった私を姐が激写

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2023/10/18

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