平泉春奈のインスタグラム(hiraizumiharuna0204) - 4月22日 20時09分
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連作短編『恋は2度目から』
第10話 罪悪感に押し潰されて(咲良サイド)
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一体何が起こっているんだろう……
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懐かしい匂いと体温が私を包み込む。
心臓がバクバク脈打って、呼吸の仕方が分からなくなった。
沢山の記憶がごちゃ混ぜになって頭の中をグルグルと駆け回る。
慎一と過ごした甘くて幸せな記憶、傷つけ合った記憶、切ない別れの記憶……
でもその中でひときわ大きく出てきた存在は、杉崎さんだった。
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“咲良、愛してる。どんなきみも愛してるよ”
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杉崎さんが私を抱きながら言った言葉。
強く、強く胸に残っている。
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杉崎さん杉崎さん杉崎さん……!今すぐ、会いたい!!
私は震える両手で慎一を突き放した。
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「ダメ……ごめん、慎一。それはできない!」
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心で考えるより先にそれが声になって吐き出された。
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「咲良……」
「付き合ってる人がいる。その人の事が今、すごく大事なの」
「うん……杉崎さん、だろ?」
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心臓がドクンと鳴った。
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「え……?」
「知ってたよ。同じビルだし噂にもなってた」
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思わず慎一の顔を見ると、どこか泣きそうな顔で笑っていた。
この顔……知ってる。
ああ、あの日最後に見た慎一の顔だ。
慎一はいつも、本当に悲しい時、笑うんだ。
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「慎一……ごめん、ごめんね!!」
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涙が溢れる。もうこの人の前では泣くべきではないのに。
私という人間は、なんて弱くて情けないのだろう。
両手で顔を覆って下を向いた。嗚咽が漏れそうになり身体中が小さく震える。
すると、頭に手のひらの重みを感じた。優しくて温かい、でも少し寂しげな。
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「いいんだ。俺の方こそ困らせてごめんな。万が一の可能性に賭けた。そして……賭けには負けた。でも本当はあの日、あの選択をした時点で俺は負けてたんだ。」
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彼はそう言って、そっと手を下ろした。
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「もう行くよ。会えて良かった。元気で……」
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私は去っていく慎一を見る事ができなかった。
彼の寂しい背中を目に焼き付けてはいけない。そんな記憶、残したくない。
ガチャンとドアの閉まる音が聞こえて、私は全身の力が抜けたようにその場に座り込んだ。
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涙が止まらない。なんで。何の涙なの。
わからない。
杉崎さん……会いたい。
でももう、会えない……
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to be continued
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【登場人物】
早見 咲良(はやみさくら26歳)
杉崎 栄治(すぎさきえいじ30歳)
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佐久間 慎一(さくましんいち26歳)
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連作短編『恋は2度目から』10話でした!
1つの話が長くなり過ぎたので前回と今回で2つに分けました。そのせいで前回は続きが気になるところで終わりになってしまいましたが、今回このような形で一つの区切りになりました(でも問題はそう簡単には解決してないけど)。
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たとえ家族のように想い合ってる関係であっても、関係が切れて会わなくなれば他人になります。
慎一と咲良、この2人の大きな違いは別れた後、大切な人ができたかできてないかの違いでした。別れた瞬間からその後の未来を別れた相手と同じような気持ちのまま進んでいける保証なんてない。気持ちのすれ違いは必ず起きるもの。そのすれ違いが起きなかった時、もしくは離れてしまった糸がまた上手く絡み合った時、『復縁』という現象が起きるってことなんですよね。人生どうなるかなんて本当に分からないものです。
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2020/4/22