平泉春奈さんのインスタグラム写真 - (平泉春奈Instagram)「 連作短編『名前のない気持ち』 最終話 この気持ちに名前をつけるなら   百瀬さんからの電話が鳴っている時、私は残業中だった。履歴を見て心臓が飛び出るほど驚き、居ても立っても居られずに電話を握りしめて外に飛び出した。折り返しボタンを押す指が震える。3コール位で百瀬さんは電話に出た。低くて落ち着いた声。彼との甘い日々がフラッシュバックする。  「久しぶり……元気?あ、ごめん……もしかして仕事中だった?」 「……うん、でも大丈夫。百瀬さんは?元気?」 「どうだろ……あまり元気じゃない、かな」 「え?体調悪いの?」 「きみと別れてからずっと調子は良くないよ」 「え?それどういう……」 「雪乃ちゃん、話したいことがあるんだ。会社の近くできみのこと待っててもいい?」   心臓の音が相手に聞こえてしまうんじゃないかって位バクバク鳴っていた。私は「すぐに仕事終わらせるから」と伝えて、近くの公園で待ち合わせた。   1ヶ月ぶりに会った百瀬さんは、やはり少しやつれているように見えた。でも優しい目元は変わってなくて、勝手に胸が高鳴っていく。百瀬さんは立ったまま私に向き合い、リラックスした口調で話し始めた。   「……出会った日のこと覚えてる?雪乃ちゃんがバーカウンターの端っこに1人で座ってて、俺が来た時には既にそこそこ酔っててさ。きみの隣の席に座って熱いおしぼりもらった瞬間、雪乃ちゃん、俺に言ったんだ。“ああ私、男に生まれ変わったらどうしてもしたいことがあるんです”って」 「ええ?覚えてない……」 「ははっ。で、俺は酔った若い女の子が下ネタでも言ってくるのかと思って身構えたら、きみはね、“その熱いおしぼりで思いっきり顔を拭きたいなあ……”って言ったんだよ」 「何それ(笑)わけわかんない」 「俺多分……その瞬間にきみのこと好きになったんだ」 「え?」 「ずっと……ずっと言えなかった。雪乃ちゃん、俺はね、きみのこと一度だって都合のいい女なんて思ったことない。好きだから……会いたくて会ってた。大好きだから、セックスしてた。大好きだから、きみがもう会わないって言った時それを受け入れられたんだ。それがきみにとって必要なことならって。……でも俺、間違ってた。大好きなら、ちゃんと大好きって言わないとダメだった。伝えもしないで"好きだから"なんて気持ちがまかり通るわけない。いい大人のくせに、そんな簡単なことも分からなかった。」   これは現実?百瀬さんが私を……嘘。   「雪乃ちゃん、俺はきみのことが大好きです。もし叶うなら……都合のいい関係じゃなくて、2人でちゃんと背負い合える関係を始められませんか?」   言葉より先に身体が動いていた。 私は、ずっと欲していた百瀬さんの大きな胸元に飛び込んだ。背中に両腕を回して強くしがみつく。目の奥から熱いものが溢れ出し、次から次へと流れ落ちた。それは殆ど嗚咽に近く、女優さんのような可愛い泣き声とは到底かけ離れた酷い声だったけど、やっと一言、振り絞るようにして言えた。   「私も……あなたのことがっ……大好き……」   百瀬さんは強く私を抱きしめ返した。これまで何度も抱き合ってきたけど、こんなに相手の気持ちが伝わってくる触れ合いは初めてだった。  私達の関係は今日、やっと始まった。   ==================   セフレ4部作「名前のない気持ち」最終話でした!  セフレってなんだろうと、この物語を書き始めてからずっと考えてました。「都合がいい関係」その本当の意味とは。人間誰しも心はある。喜怒哀楽があり感情がある。どこかの瞬間で不意に溢れる想いもきっとある。それも全部含めて都合が良いのだと言い切れるなら、もちろんそれでもいいんだと思う。でもどうしても割り切れなくて百瀬さんや雪乃のようになる人もきっといる。だから「セフレ」って一言で言っても“こういうもんだ”って片付けられない、なんとも複雑な関係だなと。  セフレをここまで掘り下げたの初めてだったので、新たな発見も多かったです。書いて本当に良かった!この物語が、今まさに悩んでる方の自分を客観的に見つめ直すキッカケになりますように。     #カップルイラスト #ハグ #紅葉  #セフレ #都合のいい関係 #決断 #感動 #イラスト #ラブストーリー #カップル #イラストレーション #恋愛 #恋愛小説 #恋愛ドラマ #ポエム #恋人 #短編  #ショートストーリー #名前のない気持ち #最終回 #エンディング #両思い #illustration #coupleillustration #Illustrator #autumnleaves」10月29日 20時03分 - hiraizumiharuna0204

平泉春奈のインスタグラム(hiraizumiharuna0204) - 10月29日 20時03分



連作短編『名前のない気持ち』
最終話 この気持ちに名前をつけるなら


百瀬さんからの電話が鳴っている時、私は残業中だった。履歴を見て心臓が飛び出るほど驚き、居ても立っても居られずに電話を握りしめて外に飛び出した。折り返しボタンを押す指が震える。3コール位で百瀬さんは電話に出た。低くて落ち着いた声。彼との甘い日々がフラッシュバックする。

「久しぶり……元気?あ、ごめん……もしかして仕事中だった?」
「……うん、でも大丈夫。百瀬さんは?元気?」
「どうだろ……あまり元気じゃない、かな」
「え?体調悪いの?」
「きみと別れてからずっと調子は良くないよ」
「え?それどういう……」
「雪乃ちゃん、話したいことがあるんだ。会社の近くできみのこと待っててもいい?」
 
心臓の音が相手に聞こえてしまうんじゃないかって位バクバク鳴っていた。私は「すぐに仕事終わらせるから」と伝えて、近くの公園で待ち合わせた。
 
1ヶ月ぶりに会った百瀬さんは、やはり少しやつれているように見えた。でも優しい目元は変わってなくて、勝手に胸が高鳴っていく。百瀬さんは立ったまま私に向き合い、リラックスした口調で話し始めた。
 
「……出会った日のこと覚えてる?雪乃ちゃんがバーカウンターの端っこに1人で座ってて、俺が来た時には既にそこそこ酔っててさ。きみの隣の席に座って熱いおしぼりもらった瞬間、雪乃ちゃん、俺に言ったんだ。“ああ私、男に生まれ変わったらどうしてもしたいことがあるんです”って」
「ええ?覚えてない……」
「ははっ。で、俺は酔った若い女の子が下ネタでも言ってくるのかと思って身構えたら、きみはね、“その熱いおしぼりで思いっきり顔を拭きたいなあ……”って言ったんだよ」
「何それ(笑)わけわかんない」
「俺多分……その瞬間にきみのこと好きになったんだ」
「え?」
「ずっと……ずっと言えなかった。雪乃ちゃん、俺はね、きみのこと一度だって都合のいい女なんて思ったことない。好きだから……会いたくて会ってた。大好きだから、セックスしてた。大好きだから、きみがもう会わないって言った時それを受け入れられたんだ。それがきみにとって必要なことならって。……でも俺、間違ってた。大好きなら、ちゃんと大好きって言わないとダメだった。伝えもしないで"好きだから"なんて気持ちがまかり通るわけない。いい大人のくせに、そんな簡単なことも分からなかった。」
 
これは現実?百瀬さんが私を……嘘。
 
「雪乃ちゃん、俺はきみのことが大好きです。もし叶うなら……都合のいい関係じゃなくて、2人でちゃんと背負い合える関係を始められませんか?」
 
言葉より先に身体が動いていた。
私は、ずっと欲していた百瀬さんの大きな胸元に飛び込んだ。背中に両腕を回して強くしがみつく。目の奥から熱いものが溢れ出し、次から次へと流れ落ちた。それは殆ど嗚咽に近く、女優さんのような可愛い泣き声とは到底かけ離れた酷い声だったけど、やっと一言、振り絞るようにして言えた。
 
「私も……あなたのことがっ……大好き……」
 
百瀬さんは強く私を抱きしめ返した。これまで何度も抱き合ってきたけど、こんなに相手の気持ちが伝わってくる触れ合いは初めてだった。

私達の関係は今日、やっと始まった。


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セフレ4部作「名前のない気持ち」最終話でした!

セフレってなんだろうと、この物語を書き始めてからずっと考えてました。「都合がいい関係」その本当の意味とは。人間誰しも心はある。喜怒哀楽があり感情がある。どこかの瞬間で不意に溢れる想いもきっとある。それも全部含めて都合が良いのだと言い切れるなら、もちろんそれでもいいんだと思う。でもどうしても割り切れなくて百瀬さんや雪乃のようになる人もきっといる。だから「セフレ」って一言で言っても“こういうもんだ”って片付けられない、なんとも複雑な関係だなと。

セフレをここまで掘り下げたの初めてだったので、新たな発見も多かったです。書いて本当に良かった!この物語が、今まさに悩んでる方の自分を客観的に見つめ直すキッカケになりますように。




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2020/10/29

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